Rate and rhythm therapy in patients with atrial fibrillation and the risk of pacing and bradyarrhythmia
心房細動患者における心拍数及びリズム治療とペーシング・徐脈のリスクに関して
Heart Rhythm 2019;16:1348-1356.
背景:
心房細動(AF)に対する心拍数及びリズムコントロールは徐脈を来たしうる。
目的:
心拍数及びリズム治療の有無で全体のリスク、時間経過におけるリスク、徐脈関連イベントのリスクを有するサブグループを評価すること。
方法:
デンマークの国内レジストリーを使用し、2000年から2014年の間にレートコントローラー(RLDs)及び抗不整脈薬(AADs)が処方されている心房細動患者を検討した。調整時間依存性ポアソン回帰モデルを使用し、RLDsとAADsが複合エンドポイントであるペースメーカー、一次ペーシング、徐脈による入院と関連しているかどうかを推定した。二次アウトカムはここのイベントとした。
結果:
135,017名のAF患者の内、9196(6.8%)の患者で複合エンドポイントが中央値3.7年(IQR 1.6-7.0年)の間に認められた。年齢の中央値は74歳(IQR 65-82)、47.6%が女性であった。レートコントローラー単剤投与をコントロールとした場合、複合エンドポイントに対するIncidence rate ratios (IRR)はRLDs2剤服用で1.36 (95% CI 1.29 – 1.43)、AADs単剤で1.62 (95% CI 1.43 – 1.84)、そしてRLDとADDの服用で2.49 (2.29 – 2.71)であった。同様の傾向がそれぞれの二次アウトカムで認められた。特にアミオダロンはリスクを上昇させた。この関連は治療開始後2週間で最も強くなった。AADにRLDsを合わせて服用していた患者では、リスクが高かったのは70歳以上(IRR: 3.35 [2.51-4.45]、60歳未満の患者と比較)、女性(IRR 1.35 [1.15 – 1.57]、男性と比較)であった。
結語:
レアルワールドのAF患者において、RLDに2剤服用、ADDの単剤服用、AADsとRLDsの服用で徐脈関連イベントと正の関連を認めた。リスクはアミオダロン服用患者、治療開始2週間以内、女性、高齢者で上昇した。
解釈に関して:
レートコントローラーと抗不整脈薬の服用により心房細動患者で徐脈関連イベントが増加するというリアルワールドデータである。循環器内科医としての臨床の感覚とも一致しており興味深い報告である。ただし、今回の結果からレートコントロールとリズムコントロールを同時に行うのを避けると考えるのは些か危険である。以下に本研究の注意点を記載する。
- データベースを使用していることから生じるMisclassification bias。
- データベースを使用していることから生じるSelection bias。特に注意が必要なのが低心機能患者にβブロッカーとアミオダロンが使用されている頻度が高く、逆にCCB(ワソラン、ジルチアゼム)やⅠ群の抗不整脈薬が使用されるケースは非常に少ないという点が考慮されていない。
- その他の徐脈を来す疾患の除外がされていない(特にアミオダロン自体が有する徐脈作用に加え、遠隔期に生じる甲状腺機能低下症等が考慮されていない)
- 年齢・性別に関するEffect modificationが評価されている点は良いが、レートコントローラーと抗不整脈薬のInteractionにより焦点を当てた方が良いように思われる。特にAdditive interactionに関して統計学的に評価を加えた方が、臨床医に取ってはメッセージ性が増すように思われる。