じんたんのブログ

シカゴでの研究留学生活、その関連情報を記載していきます。

心房細動関連の心血管死亡率が米国で上昇

CDC WONDERという米国の死亡統計を解析し、心房細動関連の心血管死亡が米国で近年上昇していることをJournal of American Heart Association (JAHA, impact factor 5.501)に報告しました。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.020163?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

 

Editorialはこちら

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.121.022555

 

心房細動関連の心血管死亡率は人種・性別に関わらず上昇傾向にあり、65歳以上では白人男性の死亡率が高く、若年男性では黒人男性が高いというDiscrepancyが認められました。

特に注目すべき点は、若年では黒人でAveraged annual percent change (AAPC)が白人よりも高いことが判明した点です。心房細動は米国の数々の前向きコホート研究の結果から、白人の方が黒人よりも罹患率が高いことが知られています。しかし、若年では黒人の方が白人よりも心房細動関連の心血管死亡率が高いのです。これは何故でしょうか。

本研究から詳細を検討することは難しいのですが、黒人の方が肥満、糖尿病、高血圧などの発症が白人よりも若年より認められることが知られており、若年の心血管死亡も黒人で多くが認められています。Socioeconomic disparity(社会・経済格差)、Educational disparity(教育格差)などなど、白人と黒人の間には大きな格差が存在しており、心血管死亡もこの格差が一因ではないかと考えられています。この格差に切り込むのは容易ではなく、途方もない時間・予算が必要であることはいうまでもありません。

本研究の結果を皮切りに、よりRacial disparity、心房細動に注目が集まり、健康寿命が伸びることを切に祈っています。