じんたんのブログ

シカゴでの研究留学生活、その関連情報を記載していきます。

論文紹介4

心臓植込み型ディバイス感染予防目的での抗菌被覆材有用性に関して

”Antibacterial Envelope to Prevent Cardiac Implantable Device Infection”

N Engl J Med. 2019;380(20):1895-1905. Trakji KG, et al.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901111?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

 

背景心臓植込み型電気ディバイス(CIED)移植後の感染は高頻度に罹患率・死亡率に関連している。CIED感染予防に関しては、術前の抗菌薬投与以外に関するエビデンスは限定的である。

 

方法

 無作為化比較試験(RCT)を実施し、CIED移植関連の感染発生率低下における、吸収性・抗菌薬溶出性被覆材の安全性・有効性を評価した。

 CIEDポケット再作成、本体交換、システムアップグレード、CER-D初回移植を受けた患者を無作為に1:1の比率で被覆材を使用するかどうか割付を行なった。全ての患者に標準的感染予防策が実施された。一次エンドポイントはCIED移植術12ヶ月以内の感染に伴うシステム抜去ないし再移植、感染再発における長期抗生剤投与、死亡と定義した。安全性に関する二次エンドポイントは12ヶ月以内の手技関連・システム関連合併症とした。

 

結果

 全体で6983名の患者が無作為化割付を受け、2495名が被覆材群に、3488名がコントロール群に割り付けられた。

 一次エンドポイントは被覆材群で25名、コントロール群では42名であった(12ヶ月時点のカプランマイヤー による推定イベント発生率はそれぞれ0.7%、1.2%であり、ハザード比は0.6; 95%信頼区間0.36 – 0.98; p値=0.04)。

 安全性に関するエンドポイントは被覆材群で201名、コントロール群で236名であった(12ヶ月の時点でカプランマイヤー による推定イベント発生率はそれぞれ6.0%、6.9%であり、ハザード比0.87; 95%信頼区間0.72 – 1.06; p値< 0.001、非劣勢)。平均(±標準偏差)のフォローアップ期間は20.7±8.5ヶ月であった。全フォローアップ期間を通しての主要CIED感染症は被覆材群で32名、コントロール群で51名であった(ハザード比0.63; 95%信頼区間0.40 – 0.98)。

 

結語:抗菌薬溶出性被覆材を共に使用することで、標準感染予防策単独群よりも有意に主要CIED感染症は低下を認め、合併症の増加も認めなかった。

 

コメント:

 高出力ディバイス移植、ディバイス交換などの際に起こるディバイス感染の予防に際して可溶性・抗菌薬溶出性被覆材を移植時に使用することで、有意に感染発生率が低下したという報告。非常に意味のある研究であると考えられ、日本でも導入を検討する価値はあると思われる。

 ただし、欧米人を対象にしたRCTであることから、当然BMIも29と非常に高値であり、体格の小柄な日本人にはなかなか当てはめるのが難しい可能性はある。

 被覆材のコストがどうなのか、長期使用に伴う感染のリスク評価、耐性菌出現の問題等も今日のある項目である。今後の長期間フォローアップデータを期待する。