じんたんのブログ

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論文紹介9

Multicentre experience with the second-generation subcutaneous implantable cardioverter defibrillator and the intermuscular two-incision implantation technique.

次世代S-ICDの多施設での移植経験及び筋内へのTwo incision法について

J Cardiovasc Electrophysiol.2019;30:854-864.

 

背景:

最近発売された次世代の皮下植込み型除細動器(S-ICD)、及び筋内へのTwo incision法によるS-ICDの移植は、ICDの不適切作動や合併症を潜在的に減らす特徴を有している。しかし、これに関して、多数の患者で検討したデータは欠如している。本多施設前向き研究の目的は、筋内へのTwo incision法を用いた次世代S-ICD移植に関する安全性及びアウトカムを評価することである。

 

方法+結果:

本研究は次世代S-ICD(EMBLEM: Boston Scientific, Marlborough, MA)を従来の標準的手法を使用せずに筋内へTwo incision法を用いて挿入した101名の連続症例(75%は男性、平均年齢45 ± 13歳)を採用した。29名(29%)の患者は二次予防目的で移植された。24名(24%)の患者は以前経静脈的にICDを移植された。除細動テストは80名(79%)の患者で実施され、心室頻拍は98.75%(79/80)の患者で65J以下の出力で本体の調整を行わずに停止させることができた。中央値21 ± 10ヶ月のフォローアップ中に、再手術、局所や全身性のディバイス関連感染症などの合併症は認めなかった。10名(9.9%)の患者は心室不整脈に対してS-ICDが適切作動し、不整脈の停止を得ることができた。3名(2.9%)の患者では不適切作動が起こり、内1名は心臓シグナルのオーバーセンシング、1名は非心臓シグナル、そして残る1名は両者が混在していた。又、この中の1名はディバイス抜去が必要となった。抗頻拍ペーシングが必要となりディバイスを抜去しなくてはならなかった患者は一人もいなかった。

 

結語:

本多施設研究によると、筋内へTwo incision法を用いて植え込まれた次世代S-ICDは安全に実施でき、不適切作動等の合併症の危険性が低いようであった。

 

コメント:

一般的に使用されている移植方法で、次世代S-ICDが問題なく作動することを多施設で示した報告。感染症などのリスクも低く、不適切作動は3名(2.9%)にしか認められなかったということで治療成績としては良好であろう。