じんたんのブログ

シカゴでの研究留学生活、その関連情報を記載していきます。

臨床研究・疫学・統計学に関する書籍1

自分の研究で使用する手法に関しては自信を持って使えるし、人にも教えられるようになってきました。しかし、最近自分の専門分野外のことや、普段使わない手法等に関して質問される機会が増えてきたため、より幅広く知識をつける必要性を感じています。

そこで、備忘録代わりに最近読んだ書籍に関して2回に分けて簡単にまとめてみようと思います。

 

1、JAMA Guide to Statistics and Methods

この本を一章ずつ輪読会で読んで学びました。本書で扱っている範囲は多岐にわたっていて、RCTのデザインの仕方、優位性試験・非劣勢試験の違い、臨床研究を行う上で必要な倫理的事項、統計学などです。一章あたり4-5ページぐらいで短くまとめられているため、深い内容を知ることはできませんが、広く浅く全体をカバーできる良い書籍だと思います。基本的には英文も平易なので読む上で支障となることはあまりありませんが、たまに非常に難解な英語が使用され理解が困難な章がいくつかありました。

また、ネット上では常に情報がアップデートされており、本書には含めることができなかった最新の内容も読むことができます。初学者には少し難しいかもしれませんが、ある程度臨床研究の経験がある人が知識を体系的に身につけたい場合に読むと良いかなと思いました。

2、Designing Clinical Research

本書籍も勉強会で使用しています。本書は臨床研究を行う上で研究者がしておくべき内容が詳細にまとめられています。母集団→Target population→観察集団の違いや、そこから得られた結果をどのように解釈すべきか、どのようなバイアスを考慮すべきかなど、普段なんとなくしか意識していないことを繰り返し同じ図を使用して説明してくれているので、嫌でも意識するようになります。上記のJAMAの書籍よりも一章あたりページ数は多いですが、英語もそこまで難しくないため臨床研究をこれから始めたい人、経験はあるがしっかりとした知識もつけたい人におすすめです。第5版が近々出版されるみたいですが、第4版までは日本語訳された本も出版されています。英語が苦手な方には良いかもしれません。

3、入門 統計的因果推論

本書は因果推論の入門書としておすすめです。最初は条件付き確率・ベイズ等の復習を行い、モンテホール問題などを解説してあります。その後、因果推論を行う上で非常に有用なDAGの説明とその応用法、介入効果・反実仮想の説明とその応用方法などが記載されています。高校生レベルの確率の知識及び初歩的な線形回帰の知識があればほとんど読み進められますが、たまに難解な部分があり止まってしまうことも。ただ、本書を通して、因果推論の面白さを複雑な数式なしに学ぶことができ、購入してよかったと思いました。

 

4、僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。〜論文をどう読んでどうお考えるか

本書は飛ばし読みで読みました。論文の検索の仕方から始まり、何に注意して読めば良いのかをIntroduction→Methods→Results→Discussionの順に記載されています。細かい点は敢えて省き、ここだけは最低押さえておいた方が良いというPointに絞って書かれているため、論文をこれから読み始めようという人、読んではいるけども自信がない人等にうってつけの内容となっています。臨床研究論文にFocusしているため、研修医・臨床医・臨床研究に携わるデータサイエンティストや薬剤師・看護師・保健師等々の方々も十分役立つと思います。

 

5、効果検証入門〜正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎

この本は個人的に非常に好きな本で、回帰分析・Propensity score matching・差分の差分・回帰不連続デザインなど、RCT以外の観察研究でどのように因果関係を調べていけば良いのか、またはその際の注意点等にFocusして記載されています。難解な数学は使用せず、文章全体も平易であり、何よりも統計ソフトRのCodeが書かれているため(一部上手くいかない部分もあるが)、読んで理解して、実際に手を動かしてみるということで知識の定着を図れます。計量経済学の基礎と表紙に書いてありますが、臨床研究・疫学研究にも有効な手法を扱っており、臨床研究・疫学研究を志す方にはおすすめの一冊です。

 

6、基礎から学ぶ楽しい疫学 第四版

基礎から学ぶ楽しい疫学と題していますが、平易な言葉で書かれているにもかかわらず、内容は非常に充実しています。本自体もコンパクトで薄いため、持ち運びにも便利であり、疫学の初学者には非常におすすめの一冊になっています。

著者のコメントや経験談などが所々に記載されており、そこを読むだけでも背景が理解できたりして非常にためになります。疫学の主要な領域は大体カバーされていますが、最近流行りの遺伝疫学とか社会疫学などは学ぶことはできません。また、より高度な内容を学びたい場合には、後で紹介するModern Epidemiologyやその他の疫学の成書を読まれることをお勧めします。