じんたんのブログ

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論文紹介6

Wrist band photoplethysmography in detection of individual pulses in atrial fibrillation and algorithm-based detection of atrial fibrillation

心房細動におけるリストバンド型フォトプレチスモグラフィーを用いた個人の脈検出とアルゴリズムに基づいた心房細動検出に関して

Europace 2019;21:1031-1038.

 

目的:

心房細動(AF)は最も一般的な頻脈性不整脈であり、心源性脳梗塞の重要な原因である。AFはしばしば間欠的であり、無症候性であることもあるため、検出は臨床的に非常に困難である。我々は心房細動患者におけるフォトプレチスモグラフィー(PPG)リストバンドで個人の脈の検出が可能かどうかを評価し、AF検出に良く用いられる2つのアルゴリズムの信頼性を評価した。

 

方法+結果:

5分間のPPGをリストバンドを着用したAF患者または洞調律患者から記録し、二つのAF検出アルゴリズム(AFEvidenceとCOSEn)を用いて解析を行った。同時にリズム解析のゴールドスタンダードとして同時記録を行った心電図を使用し、2名の循環器内科医が判読を行った。本研究は213名の患者で構成され、AFが106名で洞調律が107名であった。PPGリストバンドはAFを感度91.7 ± 11.2%、陽性的中率(PPV)97.5 ± 4.6%で検出した。洞調律では、感度99.4 ± 1.5% [7.7% (95%CI 5.5 to 9.9%), p <0.001]、PPV 98.1 ± 4.1% [0.6% (95% CI -0.6% to 1.7%), p = 0.350]。Late AF (発症48時間以上、n = 63, 59.4%)の脈波検出感度 95.1% ± 7.2% [-8.3% (95%CI -12.9% to -3.7%), p = 0.001]と比較して、recent AF(AF持続時間 < 48時間、n = 43, 40.6%)の脈波検出感度は86.7 ± 13.9%と低くかった。PPGリストバンドを用いたAF検出感度及び特異度は2つのアルゴリズムでそれぞれ96.2%/95.3%、及び98.1%であった。

 

結語:

リストバンド型PPGは2つのAF検出アルゴリズムそれぞれで精度の高いAF検出、個人の脈波検出が可能であった。アルゴリズムはPPGによる正確なAF検出を可能とした。リストバンド型PPGによりAFスクリーニングは簡便に行えると考えられた。

 

コメント:

心房細動は間欠的に出現することが初期に多く、無症候例も数多く存在するため、単回の12誘導心電図やホルター心電図では見逃しが多いことが報告されている。それを解決する方法としては、数日間ホルター心電図を着用する方法が用いられていたが、近年アップルウォッチなどのスマートウォッチに心電図記録機能が搭載され、より簡便に心房細動のスクリーニングが実施可能となった。本研究では、リストバンド型PPGという簡易脈波測定装置を使用し、AFの検出を2つのアルゴリズムで検討している。PPGの特徴としては、任意の部位に装着可能である点が挙げられる。

本研究では新規発症のAFで検出頻度が低かったという結果がであり、一番スクリーニングを行いたい患者で見逃しが多くなるという結果であったが、10%弱の見逃しは単回のホルター心電図等と比較すると非常に低く、着用自体も容易であるためえ、AFスクリーニングには有用であると考えられた。