Antithrombotic Therapy for Atrial Fibrillation with Stable Coronary Disease: AFIRE Investigators
安定型冠動脈疾患合併の心房細動に対する抗血栓療法について
N Engl J Med 2019 in press.
ESC2019のLate breakingで日本から発表があり、NEJMに同時掲載されたこの論文を本日はChoiceしてみました。
背景:
心房細動及び安定型冠動脈疾患を有する患者における抗血栓療法に関して評価した無作為化試験のデータは限られている。
方法:
日本における多施設・オープンラベル試験が実施され、2236名の心房細動患者でPCI又はCABGを一年以上前に実施された患者か、血管造影で再血行再建の必要のない冠動脈疾患が確認された患者をリバロキサバン単独療法かリバロキサバン+単剤の抗血小板薬の2群に割り付けた。一次有効性エンドポイントは脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建を要する不安定狭心症、全死亡とし、このエンドポイントは非劣勢マージン1.46で非劣勢か否かを解析した。一次安全性エンドポイントはInternational Society on Thrombosis and Hemostasisの基準を用いた重篤な出血とし、このエンドポイントは優越性を解析した。
結果:
試験はコンビネーション治療群で死亡率が上昇したため早期に中止となった。リバロキサバン単独療法群は一次有効性に関してはコンビネーション治療群と比較して非劣勢であった(イベント率 4.14% vs 5.75% per patient-year; ハザード比 0.72; 95%CI 0.55 - 0.95; P < 0.001, 非劣勢)。リバロキサバン単独療法軍はコンビネーション療法群と比較して一次安全性エンドポイントは優位であった(イベント率1.62% vs 2.76% per patient-year); ハザード比 0.59; 95%CI 0.39 - 0.89; P < 0.01, 優位性)。
結語:
心房細動合併の安定型冠動脈疾患患者において、リバロキサバン単独療法はコンビネーション療法と比較し、有効性は非劣勢、安全性は優位性があることが確認された。
コメント:
日常診療でよく出会うシチュエーションをテーマにした無作為化試験であり、非常にこの結果は有用性が高いと考えられる。
心房細動の基本治療はCHADS2 score、CHA2DS2-Vasc scoreに基づいた抗血栓療法であるが、冠動脈疾患には抗血小板薬が使用される。したがって、心房細動患者に冠動脈疾患を合併した場合には、抗血小板薬と抗血栓療法を同時に行う必要があるとされていた。しかし、昔は冠動脈疾患治療後にワーファリンを投与することで、再閉塞を予防したり、近年ではAUUSTUS試験の結果を見ても分かるようにACSにおける抗血栓薬の有用性も報告されていた。
本試験の結果から、日本人のように出血リスクの高い人種では、安定型冠動脈疾患を合併した心房細動患者に対しては抗血栓薬のみでの管理が望ましいことが判明したその意義は大きいと考えられる。
ただし、注意点としては、CCrが50を超えている患者が66%と大半を占めていることと、サブグループ解析でも腎機能低下例では効果が減弱する可能性も示唆されている。又、効果は高齢者で強く認められており、もともと出血リスクの低い若年者における結果がどうなるかは今後の解析結果を待つ必要がありそうである。