じんたんのブログ

シカゴでの研究留学生活、その関連情報を記載していきます。

症例報告 1

 症例報告は自分が経験した症例に関して、診断・治療・経過等を文献も含めて考察し、その経験を他者も共有できるように世に残すことです。症例報告をいくら書いてもダメだという先生もいますが、私は一人の医師としてとても大切なものだと考えています。一例一例真摯に向き合っていると、自分の至らなかった点に気づくことや、逆に新しい発見をすることがよくあります。そこで自分の考えたこと、学んだことを他者にも分かるように筋道を立てて説明、記載する行為は、物事を論理的に考え、伝えるトレーニングにもなるからです。

 今回は大学時代の友人が他施設で経験した症例を共に考察し、症例報告として世の中に送り出しました。私自身が直接見た症例ではありませんが、共に考え、同じ症例を通りして語り合った思い入れ深い報告です。自分だったら見逃していただろうなとも思いますし、友人のあくなき探究心、臨床医としての嗅覚に驚かされた一例です。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

大動脈解離という疾患は、大動脈が裂けることで、一般的には非常に強い痛みを引き起こし、いろいろな血管に血流障害を起こす結果、心筋梗塞脳梗塞・腸管壊死などの症状を引き起こします。高齢化・男性・高血圧・喫煙歴などが危険因子として知られており、今度わが国でもより頻度が増えるのではないかと危惧されています。血管が裂ける場所で緊急手術が必要なケースがあり、手術をしないと24時間以内に高率に亡くなってしまう非常に怖い病気です。ほとんどの症例は何らかの痛みを訴えるのですが、今回の報告は受診時に一切痛みを認めず、間欠的は下肢脱力で救急外来を受診し、最終的に大動脈解離と診断出来ました。幸い緊急手術を行うことで一命を取りとめ、リハビリ後後遺症を残さずに退院可能となった貴重な症例です。