「運動をしないと認知症発症リスクが増加するのか!?」
この疑問に対して行なった研究が上記のものです。
P:身体活動(PA)が認知症の危険因子かどうかを明らかにすること。
I:観察研究であり特に介入なし
C:PAが低い人と高い人を比較
O:Outcomeは認知症の新規発症とPAが関連しているかどうか。
Secondary outcomeは心血管疾患発症とPAが関連しているかどうか。
19個の前向き観察研究を用いて、40,4840人(平均年齢45.5歳、女性57.7%)を最大22年間追跡した。
この論文でポイントとなるのは、
2、PAはMets-min/weekなどの定量評価が行われていないこと。
3、Outcomeは国の入院患者データベース、死亡データベース、保険償還データベースなどのデータベースを元に認知症に関してもフォローしており、研究ごとに定義が異なること。
4、年齢が非常に若く、本研究で見ているのは若年性アルツハイマー等の認知症であり、我々が普段目にする老人性認知症ではない可能性があること。
5、Reverse causationを評価していること。
などが挙げられます。
結果:年齢・性別・教育レベルなどの因子で調整した場合、認知症発症10年以内のPAと認知症は関連を認めますが、それ以前のPAとの関連は認められませんでした。心血管疾患はPAと有意な相関を認めていました。
Reverse causationの解釈に関して:今回はPA低下が認知症発症の原因となるかを調べることを目的としていますが、認知症と診断された人は実は診断前(認知症前段階)の時点で認知症のため正常な人と比べて運動をしなくなっている可能性が考えれます。したがって、今回は認知症発症10年以内のPA低下と認知症発症の有意な関連を認めていますが、これはReverse causationを見ている可能性があるわけです。
色々なLimitationがありますが、Hypothesis-generatingな論文として非常に興味深く感じました。
PAの低下は認知症の新規発症と関連はナイトの結果ですが、通常見ている高齢者の認知症の予防効果に関してや、運動を積極的にすることで予防ができるかどうかに関しては今回評価していません。今後の同様の研究の結果を見てみたいと思います。